おすすめ本

【アンネの日記完全版:アンネ・フランク 深町眞理子 訳】レビュー

著者の思想に触れられて、生活の息づかいまでもが聞こえてくる、1942年に時間を巻き戻されたような感覚の本でした。

そして、13歳~15歳の多感な時期の心情や異性への好奇心、家族への葛藤など、子どもにぜひぜひ読んでもらいたい、おすすめの本です。

ただ、自分が13歳頃に勧められていたとしても、読んだかどうかは分かりません。

昔の同年代の日記を読んで何が楽しいのか、と思ってしまったなと想像します。

ただ現代における語彙の減少とは、真逆の語彙量でお送りしてくれますし、この本のような言葉でネット上での会話が繰り広げられていたとしたら、むしろ親としては、「毎日ネットを見て書き込みもしっかりしなさいよ」と言っていると思います。

長々となりましたが、老若男女におすすめの本ということです。

 

凡人の自分と比較しても意味はないかもしれませんが、14歳、15歳の時に、ここまで自分の揺れ動く感情を、ユーモアを交えて言語化できるのは、才能だと感じました。

才能に加えて、地頭の良さ、語彙力、知識量、そもそものインプット量が半端ないということにも、驚愕しました。

そら、経済やら経営やら、私では勝てないだろうと思わされます。

現代のネット、むしろリアルにおいても、「死ね」「ウザ」など単語のみでの怒りの表現が多いですよね。

うちの子もご多分に漏れず、言語表現が乏しいです。

この点は以前、おすすめ本でご紹介したブログ記事「ルポ 誰が国語力を殺すのか」でも、データを加えて指摘されています。

「死ね」という裏側にいろんな意味や「死ねバロメーター」の強弱があるにも関わらず、1つの単語で何通りもの表現に多用してしまう為、人間関係の構築を含めた難しさが生まれていると思います。

著者のように、500ページにおよぶ日記の中においても、怒りの記述は、ほとんど同じような表現はみられませんし、このような言葉や言い回しがあるんだなと感心するばかりでした。

私が心に残った部分をご紹介します。

1982年9月28日 70ページ

このわたしをめぐっての議論であるかぎりは、おとなたちは口喧嘩とは言わず、“議論”と言葉をつかいたがりますが、これは言うまでもなく、誤用です。もっとも、いまだにドイツ語でしゃべってるこの人たちなら、それくらい非常識なのも当然かもしれませんけど!

1982年9月28日 71ページ

ほんとにわたしは、そんなにみんなの言うほど無作法で、生意気で、強情で、でしゃばりで、とんまで、怠け者で、エトセトラ、エトセトラ、なんでしょうか。

1942年11月7日 98ページ

わたしはいつも、ママの悪い点には目を向けなように心がけでいます。なるべくママの良い点だけを見、ママのなかに見いだせないのは、自分自身のなかにもとめようと努力しています。でも、うまくゆきません。なにより悪いのは、パパもママも、わたしの気持ちのなかのこういう亀裂を理解してくれないこと。そしてこの点でわたしは両親を責めます。よく思うんですけど、子供を絶対的に満足させられるような、そういう親って、どこにもいないんでしょうか。

1943年7月29日 177ページ

ファン・ダーンのおばさんというのは、すばらしいひとです!模範的なお手本を示しくれます・・見習うべきです、反面教師として。おばさんがすごくでしゃばりで、わがままで、こすからくて、打算的で、欲深だということ、これは隠れもしない事実です。そのうえ、虚栄心が強くて、浮気なたちだとつけくわえてもいいでしょう。とにかく、たとえようもなく不愉快な人間であることは確かです。

1944年3月7日 304ページ

それとは逆にわたしは、どんな不幸のなかにも、つねに美しいものが残っているということを発見しました。それを探す気になりさえすれば、それだけ多くの美しいもの、多くの幸福が見つかり、ひとは心の調和をとりもどすでしょう。そして幸福なひとはだれでも、ほかのひとまで幸福にしてくれます。それだけの勇気と信念とを持つひとは、けっして不幸に押し潰れたりはしないのです。

1944年6月13日 459ページ

このところ、ひとつの疑問が1度ならず頭をもたげてき、けっして心に安らぎを与えてくれません。その疑問とは、どうしてこれほど多くの民族が過去において、そしてしばしば現在もなお、女性を男性より劣ったものとして扱ってきたのかということです。だれしもこれがいかに不当であるかは認めることでしょう。でもわたしには、それだけではじゅうぶんじゃありません。それと同時に、こういうおおいなる不法のまかりとおってきた、その根拠をしたりたいんです。

459ページの「このおおいなる不法のまかりとおってきた、その根拠をしりたいんです」というのは、私に置き換えると、優生思想などホロコーストが実行された、その根拠を知りたいということに変換されます。

自分の考えや感情を豊かな語彙で表現することができれば、友達、恋人とのつながりを深めたり、いじめの問題を減らしたりすることに繋がると強く感じています。

著者である快活なアンネを身近に感じて、「アンネだったら、どう振る舞うかな~」と考えていくだけでも、人との関わりが変わってくるように思うのです。

ぜひ、ご一読してみてください。

ではつぎの放送(記事)まで。(当時のイギリスラジオ放送での締めの言葉だそうです。410ページより)