福祉のこと

「抵抗」の能動的側面:ソーシャルワーカーの視点からの洞察

小4の娘が、分度器を使った角度を計測する宿題に苦戦しておりました。

「小4の壁」とか、聞くこともありますが、ご多分に漏れず、壁にぶつかっているようでした。

「(半ギレで)やり方を教えて」、と言うので、教えようとしても、「分かんないっー」と泣きじゃくっておりました。

出来れば良いのかもしれないですが、社会で分度器使えなくても、不便ないけどなぁ~と心の中で囁いてしまいました。

#そんなこと言ったら、さらに逆上する

今回は、分かりたいのに、分かろうとしない?娘のように、「クライアントの抵抗」について、考察していきます。

1.クライアントが抵抗する理由

16年の臨床経験を振り返ると、クライアントの「抵抗」に直面することって、よくあることです。

多くの場合、この「抵抗」は否定的・反抗的な事象として捉えられがちですよね。

聞き分けの良いクライアントを求めてしまったり、聞き分けの良くないクライアントは、困難ケース、厄介な人という印象を持つことはないでしょうか。

私の考えでは、「抵抗」はむしろ能動的な側面を持つものであり、ソーシャルワーカーとしては、この「抵抗」を理解し、対話の一部として捉えることが大切だと考えています。

肌感では、約7割以上が数回の面談で何らかの形の「抵抗」を示します。

その際の「抵抗」は、助言を拒否したり、約束を破ったり、会話を避ける、攻撃的な言動という形で現れることが多いです。

しかし、「抵抗」の背後には、クライアントが自分自身を守ろうとする力、自己主張の力などの能動的側面があるとも言えます。

こうした行動は、クライアントが自分の意志を表現し、自分自身を制御する能力を示すものです。

2.ソーシャルワーカーがクライアントを排除する理由

抵抗が強いとクライアントを排除できない、言うことを聞かせられないので、むしろクライアントの自己決定、クライアント自身が歩む人生に近づいていくことになります。

しかし、現実では、「今までこうしてきたから」、「主治医の指示だから」、などソーシャルワーカーの中で合理化して進めてしまいがちです。

ソーシャルワーカー自身がクライアントを排除している、なんてことに気づかない。

意識化するために、「抵抗」が「メッセージ性の強いメンヘラ曲」だと捉えてはどうでしょうか。

そのメッセージ性の強い曲は、どんな思いで作曲されたのか、クライアント(作曲者)にとっての意味合いはどういったものなのか。

その背景を汲み取る熱狂的なファンのような立ち振る舞いが、ソーシャルワーカーの本質なのではないかなと思います。

クライアントの抵抗するエネルギーは何か、そのエネルギーを受け止め、さらに引き出していく姿勢が、クライアントの求める生き方を支援するソーシャルワーカーと言えるのではないでしょうか。

3.抵抗を無くすから、理解するへ

ライトな事例ですと、あるクライアントは、私の提案やアドバイスをすべて拒否しました。

しかし、その行動は、彼女の自己決定権を維持しようとしていたんです。

彼女の「抵抗」は、自分自身の経験と知識を尊重するという、彼女自身の強さの表現でした。

私たちは、抵抗が一種の意思表示であり、その人自身の感じ方や考え方を理解するための手がかりであると捉えることができます。

それは、自己主張と自我の確立の一部であり、私たちの介入がどの程度受け入れられ、それがクライアントの自己観念とどのように一致するかを示すものです。

私たちの目指すべきは、「抵抗」を無くすことではなく、その「抵抗」を理解し、対話の一部として扱うことです。

抵抗を適切に理解し対応することで、クライアントの自己理解と自己表現を促し、最終的にはより良い結果を生むことができます。

4.「抵抗」の背後の感情や恐れ

「抵抗」の表現は一見、共同作業の障害と見えるかもしれませんが、実際にはクライアントの自己観念、価値観、および感情的反応に対する重要な洞察を提供します。

この情報は、支援計画の作成やクライアントとの関係性の強化に不可欠であり、ソーシャルワーカーとして私たちはこれを有効活用する必要があります。

抵抗の背後にある感情や心情を理解することで、クライアントの現在の心理的な状態やニーズ、自己観念をより深く理解することが可能になります。

そして、これにより、私たちはその人個々のニーズにより適切に対応し、よりパーソナライズされた支援を提供することができます。

抵抗の背後には、様々な感情や恐れが存在します。

それらを解明し、クライアントと共有することで、私たちは共感的な関係性を構築することができ、これは最終的には信頼関係の形成につながります。

この信頼関係があると、クライアントは自身の感情や問題に対してより開放的になり、より積極的に課題に取り組むことができます。

私の臨床経験から、抵抗を能動的な過程と理解し、クライアントとの関係性の中でその存在を認め、対話を促進することが、より深い洞察と共感、そして最終的にはより良い結果をもたらすと学びました。

5.「抵抗」は重要な支援プロセス

「抵抗」は否定的な事象ではなく、ソーシャルワーカーがクライアントの感情、価値観、自己観念を理解し、クライアントとの関係を深めるための重要な支援プロセスです。

私たちはこの「抵抗」を受け入れ、それを通じてクライアントの内面を理解し、そしてクライアント自身が自分を理解する手助けをするべきです。

結果的に、これはクライアントがより健全な精神状態となり、より良い生活を享受するための一歩となります。

私たちはこの「抵抗」を積極的に理解し、クライアントの自己理解と自己表現を促すことで、ソーシャルワーカーとしての役割を最大限に果たすことができます。

ではまた。